2009年12月04日

漢方薬おまけ「こんな医者はヤブだ」

 さて、昨日で漢方薬が保険適用外になりそうだということについては終わったんですが、ついでに「こんな漢方薬の出し方をする医者はヤブだ」というのを書いておきます。

 漢方薬を正しく処方するためには「証」を出す必要があると書きました。そのためには東洋医学的な診察を経なくてはいけません。

 東洋医学的な診察とは望・聞・問・切の四つの診察のことです。

 まず望診というのは西洋医学でいえば視診のことで、患者さんの顔色や体型を観察したり、舌診で舌の状態を観察します。

 聞診は患者さんの声に力があるかとか、お腹がぽちゃぽちゃいってないかとかそういう音で判断する部分と、体臭や口臭など臭いで判断する部分があります。

 問診は患者さんに症状や体の状態を直接尋ねることです。

 切診は主に脉診ですが、和漢の場合は腹診もします。

 顔色や体型の観察、聞診などは患者さんに話を聞きながらさりげなくやるものなので、やっているかどうかは患者さんはわからないと思います。ポイントは舌診と脉診です。

 中医学では脉診を重視します。中医学の脉診というのは手首の際から指を三本そろえて脉をとります。和漢は腹診を重視します。腹診というのは患者さんを仰向けに寝かせて、お腹のあちこちをおさえて張りや硬さをみます。

 中医学を勉強している先生であれば、腹診はやりませんが脉診は絶対にやります。和漢を勉強している先生であれば腹診は絶対にやります。

 こういう診察をやらずに、話聞いてせいぜい聴診器で音聞いて、それで「漢方薬出しておきましょうね」なんていう医者は、西洋医としてはどうか知りませんが漢方薬の観点でみれば確実にヤブです。漢方薬出されても飲まないほうが無難でしょう。

 あとは漢方薬についてはヤブだという医者がよくやる処方について。

 例えばカゼひいて熱とせきがあるから病院いったら葛根湯を出された⇒これ飲んでもいいですけど効果はありません。葛根湯というのはまだそれほどはっきりとはカゼの症状がなく、ぞくっとして「あれ、カゼかな?」と思ったぐらいの状態で飲む薬です。最近はカネボウの葛根湯のCMでも「かぜのひきはじめに」なんて書いてありますけど、そのひきはじめっていうのはこれぐらい初期の状態のことです。

 咳がひどいんで病院いったら小青竜湯を出されたた⇒咳っていうとまあ大体小青竜湯が出されることた多いです。痰を伴う咳ならまあいいんですが、その痰が黄色いねばつくようなものだったり、痰が出ないカラ咳のときは合ってません。

 花粉症で小青竜湯を出されたた⇒なんでだろう?小青竜湯というのは肺を温め水分の代謝をよくする薬です。花粉症は風熱とか風湿が原因です。去風を主として肝気を抑えるような治療しないといけないです。風湿が原因なら多少は効果あるかもしれませんが、大抵は熱を伴うのでそこを小青竜湯であっためたらいけないと思います。

 とまあ、こんな感じで「カゼには葛根湯」「〜には〜」という言い方自体間違いなんで、患者さん側は医者に出されたからといってむやみに飲んではいけません。
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2009年12月03日

漢方薬4

 今週ずっと扱ってきた漢方薬の問題についてですが、現状でもいろいろ問題を含んでいるとはいえ、やはり保険適用外にすることは反対です。医師が知識がないくせに適当にアンチョコ見て処方しているというのと、保険を使えるかどうかというのは別問題ですから。

 西洋薬があれば漢方薬なんていらないじゃないかという意見もあると思います。しかし、漢方薬というのは主成分がもつ副作用を抑える配合というのもしてあって、あくまで正しく使った場合という条件付ですが、西洋薬よりも体への負担が小さいんです。

 また、細菌やウィルスは西洋薬に対する耐性をもつこともありますが、体自体が病気を治すような方向性に持っていく漢方薬は耐性云々とはあまり関係なく効果を出せます。漢方薬の必要性というのはむしろこれからどんどん高まっていくものです。

 西洋医学の側でも漢方薬の成分分析などによって、漢方薬の効果が科学的に証明されるようにもなってきました。

 別に科学的に証明されなくても効くもんは効くのだというのが私の考えで、西洋医が「べ、別に漢方を認めたわけじゃないんだから!科学的に証明されたから使ってあげるんだからねっ!」などとツンデレ気味に言うのもどうでもいいんですが、一般の患者さんに対してはそういうデータもあったほうがより信用を得られるでしょう。

 「支那のものは全部否定する俺かっこいい」みたいなバカはおいておくとして、客観的なデータというのは東洋医学に胡散臭さを感じている層に対しても訴えるものがあると思います。

 国民の福祉ということを考えれば、漢方薬というものは医療の現場から排除すべきものではなりません。

 その上で提言しますが、理想を言えば「漢方医」のような専門資格を作って、病院での保険適用漢方薬は専門の漢方医のみが処方できるというような体制が作れれば少しはましになるのではないかと思います。

 現状では保険を使えるというメリットの大きさと同様に、いいかげんな処方によって副作用などの不利益を被るというデメリットも大きいです。

 それと、薬剤師さんの資格の改正が必要です。薬剤師さんは基本患者さんに触れることはできませんから、証を出すのに必要な脉診もできません。視診と問診だけでもそこらへんの医師よりはるかに有効な処方をしているとは思いますが、脉診の情報というのは非常に大きいものなんです。

 無免許の整体師やエステティシャンが違法にマッサージを行っている(あんま・マッサージ・指圧に関する法律では、内容の如何に関わりなく無免許でのマッサージそのものを禁じています)のを放置している現状で、ちゃんとした国家の資格をもちながら、正しく処方を行うのに必要である脉診ができないというのはおかしな話です。

 日本という国は、製薬技術なども含めて最高の医療水準にあると思います。しかしそれらを運用する制度がおかしすぎるんですね。医療というのは国民の健康を支えるという重要な役割を担っているわけですから、もっと国民の利となる制度を構築してもらわないと困ります。
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2009年12月02日

漢方薬3

 さてこれまで2回にわたって、保険が適用される医師の処方による漢方薬は実際のところあまり効果を期待できるものではないということを書いてきました。

 それでもなおかつ保険適用外になることに反対する理由は、以下の問題が考えられるからです。

●保険適用外になった場合予測される問題

 漢方薬というのはそもそも高いものでした。私が学生だった20年前は薬局で市販の漢方薬を買うとなかなか高くついたものでした。

 最近は漢方薬もとても安価になりましたし、そこらへんのドラッグストアでも簡単に手に入るようになりました。

 それもエキス剤が普及したためです。日本の漢方エキス剤の製造技術は世界一と言っていいでしょう。保険適用になったためにエキス剤が大量に生産されるようになり、安価に安定して供給されるようになりました。

 例の仕分けでは漢方薬を保険適用外にする根拠として、薬局で入手できるものを医師が処方する必要性がとぼしいと言っていますが、保険適用外になって病院で取り扱わないようになれば当然エキス剤の製造ラインも縮小され、結果的に市販の漢方薬の価格も上昇すると予測できます。

 そうなれば漢方薬はますます庶民には遠い存在になります。

 これまで書いたように漢方薬の処方には専門知識が必要です。所謂「漢方薬局」には専門に勉強した薬剤師さんがいますから、現状でも医師よりはるかに正しい処方がされていると思われます。

 しかし一般の薬局やドラッグストアにそうした専門家はほとんどいません。そして漢方専門薬局よりも一般の薬局、一般の薬局よりもチェーンのドラッグストアのほうが数が多いわけです。となれば漢方薬が正しく処方される機会はさらに減っていくことになります。

 市販の漢方薬には大抵「のどの痛みに」とか「咳に」といったような効能書きがあります。ところが、あれを見ても正しい処方はできません。

 例えば私は昨年カゼをこじらせてしまったときに柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)という薬を飲んで症状を緩和させました。この薬は実熱を瀉し、三焦を疎通させる薬です。箱の効能書きには「イライラ、不眠に」と書いてあります。

 私は知識とある特殊な判別法でこの薬を選んで、それがその時の証に合っていました。普通カゼにこの薬は処方しません。薬剤師さんも、箱の効能書きを見て買う客も、カゼがこじれたからといって「イライラ、不眠に」と書いてある薬は選ばないでしょう。しかしカゼであっても証が合えば効くんです。

 漢方薬というのはこのように、本来効能書きだけでは判断しきれないものです。ですから薬局で市販しているからそれでいいというものでもないんです。

 病院で処方されなくなり、価格も高くなって、しかも正しい処方がされないために効果がでないとなってくれば、漢方薬そのものが日本からなくなってしまう可能性があるというのも、大げさな話ではないと思います。

 漢方薬はもちろん支那から渡ってきたものですが、日本人はそれに対して研究を重ね、日本独自の生薬なども配合した「和漢」という漢方薬文化をつくってきました。日本から漢方薬がなくなれば、そうした文化もなくなってしまいます。

 しかし将来漢方薬がもっと見直されて必要とされる時代が来たときに、それを今なくしてしまったらその再構築にはどれだけの時間がかかるでしょうか?

 問題はツムラなどの製薬会社がつぶれるつぶれないなどといった小さなことではなく、これまで先人が伝えてきた文化そのものが後代に伝えられなくなってしまうというところにあります。
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2009年12月01日

漢方薬2

 前回に引き続き漢方薬についてです。

●漢方薬は長く飲まないと効かない?
 漢方薬と言うのは効果が穏やかなので、長く飲み続けないと効果が出ないとよく言われています。

 確かに漢方薬の一部にはそういう薬もあります。主に体質が弱っていることで起こる慢性病などを治療するための薬などはそうです。

 しかし急性病に対してそんな悠長なことは言っていられません。証に合った薬であれば、漢方薬は急性症に対して速やかに効果が出ます。

 また逆に、間違った処方の薬を飲み続ければさらに体を悪くする場合があります。

 要するにこれは、昨日論じたのと同様正しい処方があまりされていないというところに原因があります。

 漢方薬の効果が穏やかというのは、効果が出せなかった医師の言い訳に過ぎません。実際には、薬によってはかなり強い薬効をもつものがあり、それは裏を返せば間違って使った場合の副作用も強いということです。

 漢方薬の原料となる生薬はすべて自然の産物だから、化学合成された薬物よりも体にいいというのも大きな間違いで、自然に育つものの中にも毒は沢山あります。それらの中で人の病気に対して有効なものを薬と呼んでいるだけのことです。

 であればこそ、漢方薬を扱うためには専門の知識が必要となるのですが、医師というのは基本西洋医学の専門家であって、東洋医学については完全に素人です。ごくわずかな志有る医師のみが和漢や中医学を勉強して漢方薬の処方に役立てています。

 実際のところ、そういうちゃんと勉強している医師がいる病院が近所にないのであれば、きちんと漢方薬の勉強をした薬剤師さんがいる漢方薬局に行ったほうがはるかに効果的な処方をしてもらえます。ただし、漢方薬局で独自に処方してもらった場合は保険はききせん。

 こういう現状を知っている人は、別に漢方薬が保険の適用外になってもいいんじゃないかということを言っています。それはそれで一理あるとは思います。それでもなおかつ保険適用外になることを反対する理由は明日書きます。
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2009年11月30日

漢方薬1

 例の事業仕分けというアホパフォーマンスによって漢方薬が保険適用外になる可能性が出てきたとのこと。長妻厚労相は即座に実施されることではないという見解を示しましたが、さてどうなることやら。

 とりあえず私の意見を言わせてもらえば反対です。

 鍼灸師は薬品を扱える資格ではないとは雖も、事は東洋医学全体にかかわってくる問題でもあります。以前何回か漢方薬についても書いたことがありますが、保険適用外になるとどうなってしまうかという想定も含めて、改めて漢方薬について論じてみたいと思います。

●漢方薬は効かない?
 ツムラによれば国内での漢方薬使用割合のうち8割ぐらいは病院での処方だということです。しかしそのうち果たしてどれだけの病院で正しい処方がされているでしょうか?

 日本では「漢方薬は効かない」「気休め」「長く飲まないと効果がでない」という認識が多いように思います。

 漢方薬は証に合った処方をしないと効果は出ません。証というのは患者さんを総合的に、東洋医学の観点から診察して得られる診断のことです。

 証を出すには、和漢なり中医学なりの専門的な知識が必要です。しかしそのような専門知識をもった医師はごくわずかです。では医師の多くはどうやって漢方薬を処方しているかというと、ツムラが配っているアンチョコを見ています。

 ツムラのアンチョコというのは、代表的な漢方薬の表に効能書きがついているものです。例えば葛根湯ならかぜとか肩こりとか。多くの医師は問診をして、アンチョコを見て、そこに載っている効能書きに対応する漢方薬を出しています。しかしそれでは正しい処方はできません。

 例えば同じ咳でも冷えが原因のものもあれば、熱が原因のものもあります。冷えが原因のものに冷やす薬を出してしまったら当然悪化します。漢方薬を勉強していない医師にはそういう認識がありません。

 たまに偶然証が合って効くこともあるのでしょうけれど、まあほとんどが合っていないし、医師の場合は西洋薬も一緒に出すので効果があったとしても西洋薬で効いたのか漢方薬で効いたのかわかりません。

 ということで、漢方薬を漢方薬として処方して効果を出せている医師というのは全体のほんとうに極わずかだと思います。「漢方薬は効かない」と思われているのは、こうした医師の怠慢に由るところも大きいのではないかと思います。
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