中医学の診察法に「切診」というのがあります。これは主に脉診を指しますが、筋肉の緊張やしこりの有無など患者さんの体表に触れて状態を見ることも含まれます。和漢の診察で用いられてきた腹診も切診に入ります。
で、そういう診察がなぜ「“切”診」というのか?
手元にある電子辞書に収録されている『漢字源』によれば、「切」という字の原義は「刃物をぴったりきり口に当ててきること」とあります。
そこから「切」という字には「切る」という意味と「接する。ぴったりくっつける」という意味が派生しました。現代中国語の発音だと、「切る」ほうはqieの一声で、「接する」ほうはqieの四声です。
切診はもちろん後者の「接する」というほうの意味で、「手を患者さんに接する診察」という意味で「切診」といいます。
ところが何を勘違いしたのか「切診は本来“切る”ように診察することである」と言って、手足の筋肉をごりごり切るようにはじいて診察する流派があるそうで、それがどんだけ頭悪い行為であるかは上記の解説を読んでもらえばよくわかると思います。
ちなみに「親切」の「切」も四声で発音します。「親しく接する」のが親切であって、だから「親を切るのに親切とはこれいかに」みたいな疑問は漢字の原義を知っていれば出てきません。
漢字っていうのは支那のものを借りて使ってるだけですから、日本語の解釈だけで漢字を見るとこういうアホなことになります。
こないだテレビで硯職人の人が「硯は石を見ると書きますから、見ることも大切です」と言ってましたが、これも『漢字源』で調べると「石+(音符)見」。見の原義とは関係がない。だそうです。
八卦掌の基礎鍛錬は円形に歩く「走圏」です。「走ると書くから走るように回るのだ」とか言っちゃってる子がいましたが、中国語で「走」つったら「歩く」という意味で、走圏は「圏を歩く」鍛錬です。
こういう間違いはとっても恥ずかしいのでやめましょう。
ついでに付け加えると、「日本と中国は同じ漢字を使っているから、中国語を知らなくても筆談で通じる」ということはありません。「欲 手紙」と中国人に書いて見せたらトイレットペーパー渡されますよ。
posted by 院長 at 17:00|
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